転職エージェントとの面談や採用担当者との面接では必ず転職理由を聞かれます。
転職を考えるからには何らかの背景理由があるはずですが、普段はそれが漠然としている事が多いのではないでしょうか。しかし、漠然で曖昧とした転職理由では転職エージェントも的確なサポートができませんし、採用担当者に自分を採用すべき人材として説得もできないでしょう。
このため、チャンスを台無しにしないように転職活動をするためには、転職エージェントや採用担当者と会う前に転職理由を十分明確にしておくことが求められます。本記事ではこの転職理由の明確化の手順を説明していきます。
まず次のセクションでは、転職活動は既に転職情報サイトに登録する前の段階から始まっており、その準備段階で転職理由を明確化しておく事が後のプロセスをスムーズにするために大切になるということを説明します。
転職情報サイトに登録する前のしっかりした準備は成功する転職活動の第一歩です。
このプロセスは、自分のキャリア目標を明確にし、将来の職場で何を達成したいのかを具体的に定義することから始まります。多くのケースで、転職を考える人々は、自分のキャリアに何が欠けているのか、または現在の職場で満たされていないニーズが何かを漠然と感じています。しかし、これらの感覚を具体的な転職の目的に変換することなく転職情報サイトに飛び込むと、転職エージェントによる提案が自分の真のキャリア目標や望みとは異なる方向に導かれる可能性があります。
転職エージェントは、登録された情報や提供された転職の理由に基づいて案件を提案します。もし転職理由が漠然としていると、転職エージェントはあなたのキャリアの望みを正確に把握することができず、結果的にあなたのスキルや興味に完全にはマッチしない案件を紹介することになります。これは、時間の浪費につながるだけでなく、転職後に「転職しても状況が改善されなかった」と感じるリスクも高まります。
そのため、転職サイトに登録する前には転職理由を明確化するために、現在の職場でどのような点に不満を感じているのか、またはどのような新たな挑戦を求めているのかを明確にしましょう。さらに、どのような業界で働きたいのか、理想の職場環境はどのようなものか、求める役割や責任の範囲は何かといった点も考慮することが重要です。
ITエンジニアはそれなりの社会人年数を過ごしてきており、過去に関わったタスクやプロジェクトが多くあると思われます。その時やった事実と合わせ不満ややりがいのような感じたことを整理していくことで、自分の不満が発生しやすい状況と能力を発揮し安くやりがいを感じる状況の傾向を掴むことができるはずです。具体的に整理された不満を解消し強みを活かせる状況を実現させることが転職理由となります。
この不満から転職理由へと明確化するプロセスを通じ、あなたは転職エージェントとの初めての会話で、自分のキャリアの目標や求めるポジションについて具体的かつ明確に伝えることができます。これにより、エージェントはより適切な案件を提案することが可能になり、転職活動がより目的に沿った形で進むようになります。また、自分自身で転職の目的と理由を明確にすることは、面接時に自信を持って自分のキャリアプランを説明できるようになるための基盤ともなります。
転職情報サイトに登録する前に行うこの準備作業は、あなたの将来のキャリアを有意義なものにするための重要なステップです。自分の望みと目標を明確にし、それを実現するための転職活動を行うことで、より充実した職業生活を送ることができるようになります。
転職理由を明確化させるためには理想のキャリア像がしっかりできている必要があります。理想のキャリア像は現在の不満をしっかり自己認識し分析することから現れてきます。
そこで次のセクションでは現職への不満を明確化させる方法について説明します。
現職への不満を明確化する過程は、自己認識を深め、今後のキャリアパスで何を改善したいかをより明確にするための重要なステップです。このプロセスを始めるにあたり、年収以外に集中することが肝要です。年収が低いといった不満があったとしても実際にはその状態が実現している背景理由が何かしら紐づいているはずです。その背景理由もまたそれぞれが不満要素となってきます。例えば、仕事の内容、職場環境、人間関係、キャリア成長の機会、ワークライフバランス、会社の文化や価値観との不一致などによってモチベーションが上がらずその結果として年収が上がる様な活躍ができていないということが考えられる分けです。
不満点を書き出す際には、日々の業務で直面する困難やストレスの原因、仕事に対するモチベーションの欠如、プロジェクトやチーム内での役割に関する不満、技術的な挑戦の不足、学びの機会の欠如、上司や同僚との関係性、職場の物理的環境やリソースの不足など、具体的な例を挙げてみてください。このリストアップ作業には時間をかけ、数日間にわたって思いつく限りの不満を追加していくことも有効です。
転職理由は必ずしも不満だけではないかもしれません。新しいスキルを身につけて成長したい、役割の幅を広げてキャリア成長したいなど、ポジティブな理由が考えられます。しかし、現職においてこの様な理由が出てくるということは、目指すべきポジティブな状態が現状では実現が難しいから出てくるわけで、広い意味で不満点として捉えることができます。従ってここではこの様なポジティブな理由も上述の意味で不満点として扱っていきます。
話を進めるために不満リストの例を下に示しておきます。
作成した不満リストを見返し、それぞれの不満項目に対し主観的に不満度をつけて分類します。例えば不満点を「不満度:高」「不満度:中」「不満度:低」といったカテゴリーに分類することで順位付けを行うことができます。カテゴリ分けしたリストの例を下に示します。
この作業は自分が何を最も価値あるものと考え、何を改善したいと強く感じているのかを理解するのに役立ちます。
不満点に優先順位をつけた後は、それらがなぜ自分にとって問題となっているのか、その背景にある理由を深く考えることが重要です。例えば、人間関係の不満が高い優先順位にある場合、それは単に個人間の相性の問題なのか、それとも会社全体のコミュニケーション文化が原因なのかを考えます。このような分析を行うことで、転職先を選ぶ際にどのような環境が自分に適しているかをより明確に判断することができます。
この手順について次のセクションで説明していきます。
不満が生じた原因を掘り下げて考える過程は、将来的により満足のいくキャリアパスを選択するための重要なステップです。この分析は自分が直面している問題の根本原因を理解し、転職活動において同じ種類の問題を避けるために不可欠です。具体的には、会社全体の文化、部署の特有の動き、上司や同僚との関係性、職場環境、キャリア成長の機会、ワークライフバランスなど、多様な観点から自分の不満の原因を探索していきます。考えられる観点の例を列挙すると次の通りです:
会社全体の文化: 企業が価値を置くもの、社員に期待する行動様式、意思決定のプロセス、フィードバックの文化、リスクを取ることに対する態度などを考慮することが重要です。これらの文化的要素が自分の働き方や価値観と合致しているかどうかを評価することで、不満の原因が会社文化に根ざしているのかどうかを見極めることができます。
部署の動きやチームの状況: チーム内のコミュニケーションの質、協力し合う文化があるかどうか、目標に対する共通の理解が存在するか、そしてプロジェクト管理の方法を検討します。部署が目標に向かって一丸となって動いているか、それとも個々人がバラバラに仕事を進めているのか、このような点が不満の背景にあるかもしれません。
上司や同僚との関係性: 関係が支持的であるか、または競争的であるかを考えます。上司から適切なガイダンスやフィードバックが得られているか、同僚との関係が協力的で健全かどうかが、職場での満足度に大きく影響します。また、コミュニケーションの障壁、誤解、信頼の欠如などが不満の原因となっている可能性があります。
職場環境: エンジニアであれば次の様な検討項目が挙げられます。作業に集中できる環境か、PCやディスプレーなどの開発環境が自分が求めている水準か、新しい技術を取り入れる事ができているか、技術書籍の購入補助があるか、技術カンファレンスへの参加の許可及び参加費のサポートがあるか、社内勉強会があるか、勤務時間が柔軟か、リモートワークができるかなど。
キャリア成長の機会: ITエンジニアでスペシャリスト志向であれば、例えば次のような検討事項が挙げられます。スペシャリストのままでもマネジメントロールと同等レベルの昇給が可能なのか、別の事業や部署やチームに異動ができるか、専門性の異なる技術に挑戦する機会があるか、TechLeadやエンジニアリングマネージャー(EM)の役割機会があるか、などが考えられます。
ワークライフバランス: ある時期には、交際を始めたり、結婚・出産の機会が発生するかもしれません。その様な場合、次の様な事が検討事項になり得ます。残業が重くないか、私用での早退が可能か、有給休暇がしっかり取れるか、育児休業(育休)を取り職場に復帰できるか、時短勤務が可能か。
これらの要因を個別に分析することで、不満の原因が個人的な問題なのか、それとも組織やチームの構造的な問題によるものなのかを区別することが可能になります。この分析を通じて、次の職場選びではどのような点を重視すべきか、またどのような環境が自分にとって最適かが見えてきます。例えば、会社文化の不一致が原因であれば、次の職場では企業のミッションや価値観が自分と合致しているかをより慎重に評価することが求められます。また、上司や同僚との関係性に問題がある場合は、面接時にチームの雰囲気や管理スタイルについて具体的な質問をすることで、より良い職場選びが可能になります。
不満度別の不満リストの例 で具体的に考えてみます。不満度:低と不満度:中は不満度:高に対して相対的に改善欲求が低く、業務で発生したとしてもそれな入りに対応できると仮定します。そこで不満度:高に注目すると、次のように不満項目から改善したい環境概念を抽出することができます:
このように不満の高い項目から改善したい環境の概念を抽出することで、それらの環境を実現させる方向が転職の大きな理由であることが浮かび上がってきました。
ここまでの分析では、仕事での不満を具体化させそこから自分が求めている仕事環境を探ってきました。不満点や改善したい環境概念をそのまま転職理由とすると採用担当者にネガティブに捉えられ不利となってしまう恐れがあります。そこで次のセクションでは不満の理由をポジティブな転職理由に変換する方法を説明します。
不満点をポジティブな転職理由に変換するプロセスは、転職活動において非常に重要です。このアプローチにより、あなたがキャリアの次の段階で求めている具体的な機会や経験を、転職エージェントや将来の雇用主に対して明確に伝えることができます。このプロセスでは、まず現職での不満点を全て洗い出し、それらを一つ一つ前向きな目標や求める状況に変換していきます。
たとえば、もし「プロジェクト管理の経験が不足している」という不満がある場合、これを「リーダーシップを発揮し、チームを牽引するプロジェクト管理の機会を求めています」というポジティブな転職理由に変えることができます。また、「職場のコミュニケーションが不十分である」という不満は、「オープンで透明性の高いコミュニケーションを重視する職場環境を望んでいます」と表現することができます。
この変換プロセスにおいて重要なのは、不満点を単なる不平ではなく、自己成長やキャリアアップを望む積極的な意欲として提示することです。例えば、「給与が低い」という不満は、「自分のスキルと貢献に見合った報酬を求めています」と表現することで、より建設的な転職理由になります。さらに、「技術的な挑戦が少ない」という点は、「最新の技術を学び、応用することで業界に貢献したい」という形に変えることで、あなたの学びへの意欲と業界への貢献を強調できます。
不満項目から改善したい環境概念を抽出する例 の概念を使ってポジティブな転職理由にする例を下にあげます。
注意点: ここでは転職先候補の企業文化を理想状態として仮置きしています。この仮置きした企業は自分が転職したい企業の社風を表しているので、転職サイトなどで企業探しの時の軸として使います。最終的な転職理由にするためには、企業研究をして各企業の実態に合わせた転職理由になるように最終調整が必要になります。どの企業でも使いまわせる転職理由だと落とされてしまう可能性があるからです。
まず抽出した概念をできるだけ前向きなフレーズに変えます。例えば:
上記で出したフレーズを転職理由になる様に繋げます:
転職理由を明確にすることは、転職エージェントや面接官に対して、あなたが自分のキャリアにおいて何を重視しているのか、そして次の職場でどのような価値を提供できるのかを示す機会となります。また、具体的かつポジティブな転職理由を持っていることは、面接で自信を持って自分自身をアピールするのにも役立ちます。さらに、このプロセスを通じて、実際にどのような職場が自分にとって理想的なのかをより明確に理解することができ、より効果的な転職活動を行うことが可能になります。
このように、現職での不満点をポジティブな転職理由へと巧みに変換することで、あなたのキャリアの目標と次のステップへの意欲を、具体的かつ積極的に伝えることができます。これは、成功に向けた転職活動の鍵となるアプローチです。
ここまでのプロセスで転職理由の明確化の方法の説明になります。転職理由を考えることと並行して行う必要があるのはこれまでの経験の棚卸しです。棚卸しされた経験から転職理由をさらに磨き上げることができます。次のセクションではこのことを説明していきます。
転職活動を開始する前にこれまでの経験の棚卸しを行うことは、あなたの転職理由を明確にし、次のステップに向けての準備を整える上で非常に重要です。このプロセスでは、自分がこれまでに取り組んできたプロジェクト、担当した役割、達成した成果、学んだスキル、そして直面した挑戦について詳細に振り返ります。この詳細な棚卸し作業を通じて、自分の強みと弱み、キャリアの成長ポイント、そして将来の目標に繋がる可能性のある分野を明確に把握することができます。
具体的には、まず過去のプロジェクトや業務をリストアップし、それぞれについて、担当した役割、使用した技術やツール、達成した成果、そして直面した課題や学んだ教訓について記録します。この作業を行うことで、あなたの専門知識の範囲、技術的な能力、プロジェクト管理やチームリーダーシップなどのソフトスキルを客観的に評価することが可能になります。
次に、この経験の棚卸しリストを、以前に作成した職場の不満リストと照らし合わせます。この比較を通じて、特定の不満があなたの経験やスキルセットとどのように関連しているか、またはあなたの現在の職場があなたの成長や目標達成をどのように妨げているかを具体的に理解することができます。例えば、技術的な挑戦が少ないという不満がある場合、それは過去に挑戦的な技術プロジェクトに取り組んできた経験が活かされていないことに起因しているかもしれません。
この分析をもとに、あなたは転職理由をより具体的に、そして戦略的に更新することができます。不満解消だけでなく、キャリアの成長と発展を促す新たなチャレンジへの意欲を、転職理由として明確に打ち出すことができます。例えば、「より高度な技術スキルを要求される環境で働きたい」「リーダーシップを発揮し、チームを成功に導く機会を求めている」「新しい産業や分野での経験を積みたい」といった形で、ポジティブかつ具体的な転職理由に結び付けます。
最終的に、これまでの経験の棚卸しと不満点の分析を踏まえて更新した転職理由は、転職エージェントや面接官に対して、あなたが次の職場で何を求め、どのような価値を提供できるかを明確に伝えるための強力なツールとなります。このプロセスを通じて、自分自身のキャリアに対する理解を深め、より意味のある転職活動を展開することが可能になります。
より詳細な経験の棚卸しの手順はこちらの記事で紹介しています。
転職理由の明確化やキャリア経験の棚卸しを完了した後、次に取り組むべきは、自己分析、業界・企業研究です。次のセクションではこれらのことについて言及しています。
これまでのキャリア経験の棚卸しを完了した後、次に取り組むべきは、より深い自己分析、そして業界と企業に関する詳細な研究です。この段階では、自己のキャリア目標、興味、価値観を明確にし、それらが特定の業界や企業とどのようにリンクしているかを理解することが目的です。このプロセスを通じて、自分のキャリアの方向性をさらに鮮明にし、転職活動をより戦略的に進めることができます。
自己分析
自己分析では、これまでの経験の棚卸しで得られた情報を基に、自分の強み、弱み、興味がある分野、そしてキャリアで達成したい目標をより詳細に分析します。例えば、特定の技術スキルやプロジェクト管理能力が強みであることが分かっていれば、これらのスキルを活かせる業界や職種に焦点を当てることができます。また、働き方に対する価値観やキャリアで実現したいビジョンも、転職先を選定する上で重要な基準となります。
自己分析についてより詳しくは次の記事で紹介しています。
業界研究
業界研究では、自分が興味を持つ業界の現状、トレンド、将来性について調査します。この研究を通じて、その業界が直面している課題や求められているスキルセット、成長可能性を把握できます。また、業界のトレンドが自分のキャリア目標やスキルとどのようにマッチしているかを評価することができ、転職理由をより具体的かつ説得力のあるものにすることが可能になります。
業界研究についてより詳しくは次の記事で紹介しています。
企業研究
企業研究では、特定の企業の文化、価値観、事業内容、成長戦略などを深く理解します。これには、企業の公式ウェブサイト、業界レポート、従業員のレビュー、ソーシャルメディアなど、多岐にわたる情報源を利用することが含まれます。企業研究を行うことで、その企業が自分のキャリア目標や価値観とどのように合致しているか、またどのような貢献ができるかを具体的に理解することができます。
企業研究についてより詳しくは次の記事て紹介しています。
自己分析、業界研究、企業研究を経て、あなたの不満リストの背景にある問題がこれらの分析や研究から得た知見によってどのように説明され、解決される可能性があるのかを検証します。このプロセスは、転職理由をより詳細に、そして具体的にするのに役立ちます。例えば、特定の業界で求められるスキルが自分には不足していることが不満の一因である場合、そのスキルを習得することで業界内でのキャリア機会を広げることが可能になるというポジティブな転職理由を構築できます。
このようにして、自己分析、業界研究、企業研究を通じて、あなたは自分自身のキャリアに対する深い理解を得るとともに、転職活動を具体的な目標と戦略に基づいて進めることができるようになります。
転職の理由の明確化と並行してこれまでの経験の棚卸しも実施しておく のセクションで説明したように、転職理由の明確化と並行してキャリアの棚卸しも必須です。それを説明したのが次の記事です。
これまでの経験の棚卸しもすでにできている人は、さらに重要な、自己分析、業界研究、企業研究へと進みましょう のセクションで説明した様に、転職理由の明確化もキャリアの棚卸しも終わっている方は自己分析、業界研究、企業研究を実施しましょう。それを説明したのが次の記事です。
上記の項目が既に済んでいる方は職務経歴書や履歴書の準備を進めましょう。それらを説明したのが次の記事です。
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