企業研究

目次

Introduction

転職準備のためには自己分析、業界研究、企業研究が必要とされています。自己分析や業界研究を実施することで転職希望先の企業をある程度絞り込む事ができます。その次にすべきことは個別の企業研究です。このプロセスを経てようやく転職希望先企業を決める事ができます。

企業研究には大別して定量データ評価と定性データ評価があります。定量データの評価は売上などの財務指標のパフォーマンスを見るもので、この先企業が持続的に成長していけるのか具体的に知るために必要な情報です。定性データの評価は企業カルチャー、評価制度、事業方針、採用方針、口コミなどを見ます。企業の定性情報をきっちり把握し自分の志向性とのマッチングを討することで無理なく継続的に活躍していけるか知る事ができます。

ITエンジニアとしてある程度の経験を積み更なるキャリアの成長を目指すかもしれません。また、交際・結婚・出産などのライフイベントが発生してライフワークバランスを見直すかもしれません。その様な大切な時期に転職が失敗して働きにくくなったり評価を下げて後悔することは避けたいものです。そのためにも企業研究を入念に行う事が大切です。


そこで本記事では企業研究の方法を説明します。まず初めに次のセクションではなぜ企業研究が必要なのか詳しく見ていきます。

なぜ企業研究が必要なのか

転職は人生の大きな節目であり、特にITエンジニアにとっては、キャリアの方向性を大きく左右する重要な決断です。多くの場合、年収の向上は転職を考える大きな動機の一つですが、それだけが全てではありません。企業文化とのマッチング、仕事の充実感、キャリア成長の機会など、考慮すべき要素は数多く存在します。ここで企業研究の重要性が浮かび上がります。

企業研究を行う主な理由は、単に情報を収集することを超え、転職先との深い相性を見極めるためです。具体的なイメージを持たずに転職を決めた場合、たとえ年収が上がったとしても、仕事の日々がストレスに満ち、キャリアの満足度が下がるリスクがあります。企業文化、働き方、チームの雰囲気、上司との関係、仕事の自由度など、多面的なマッチングが必要であり、これらは表面的な情報では把握できない深層の要素です。

転職エージェントを利用する場合、彼らのサービスは非常に価値がありますが、彼らの目的もビジネスであることを忘れてはなりません。エージェントは利益を最大化するため、時には年収が高いポジションを推薦することがあります。しかし、年収の高さだけで企業を選択することは、長期的なキャリアの満足度や職場での幸福感を犠牲にする可能性があります。このような状況で最も重要なのは、自分自身で企業について冷静に判断し、自分の価値観、キャリア目標、働き方の好みと企業の文化やビジョンが合致するかどうかを確認することです。

また、企業研究は自分が望むキャリアの方向性を明確にするプロセスでもあります。自分自身のキャリアに何を求めているのか、どのような環境で最も生産的になれるのか、どのような企業文化が自分に合っているのかといった自問自答を通じて、自分自身の理解を深めることができます。これにより、転職活動がより目的意識を持ったものになり、成功に結びつく可能性が高まります。

企業研究は時間と労力を要するプロセスですが、その価値は計り知れません。自分自身と将来の職場との間に深い相性を見つけ出し、キャリアの満足度を高めるための重要なステップなのです。したがって、企業研究を通じて得られる洞察は、単に次の仕事を見つけるためではなく、自分自身のキャリアを豊かにするための貴重な資産となります。

詳細な企業研究の説明に入る前に、次のセクションでは企業研究をどう進めるべきなのか、そのプロセスについて説明します。

企業研究のプロセス

企業研究のプロセスは、転職活動において非常に重要な段階です。この段階では、自分のキャリア目標と価値観に合致する企業を見つけ出し、その企業が提供する機会が自分のスキルセットやキャリアアップの望みとマッチするかを評価します。このプロセスを効率的かつ効果的に進めるための一般的な順序は以下のようになります。

ステップ 1: 自己分析と市場調査
まず これまでのキャリアの棚卸し のリストや 自己分析 で紹介した方法等で、自分のキャリアの目標、価値観、スキルセット、そして求める職場環境について深く考えます。この分析を基に興味のある業界や職種を特定し、業界研究で紹介した方法等を利用して、それらの市場動向や将来性を調査します。この段階では、転職情報サイトや業界レポート、ニュース記事などが役立ちます。

ステップ 2: ターゲット企業の選定
転職希望先として既に具体的な企業が出揃っている場合はそれらの企業研究を深めます。まだ具体的な企業が出せていない場合は、ステップ1で得た情報を基に転職情報サイトで業界や職種を指定して企業検索を行い、関心を持った企業をリストアップします。この際、あまりにも絞り込みすぎずに、広い視野で様々な可能性を模索することが重要です。業界の代表的な企業を見つける方法は 業界研究代表的な企業の把握 のセクションでも紹介しています。

ステップ 3: 情報収集
選定した企業について、公式ウェブサイト、有価証券報告書、決算説明資料、転職情報サイトの口コミ、採用ページなどから、定量データと定性データをできるだけ多くの情報を収集します。ここでは、企業の財務状態、経営戦略、働き方、社内文化、キャリア成長の機会など、幅広い側面からの情報を網羅的に理解することを目指します。

ステップ 4: 総合的な検討
収集した情報を基に、企業の求める人物像が自己分析で明らかにした自分のキャリア目標や価値観に合致しているか分析します。この段階では、可能であればカジュアル面談などによって企業の現従業員に話を聞く、企業が主催するイベントや採用説明会に参加するなど、直接企業から情報を得る努力も重要です。

これらのプロセスを通じて、転職先企業とのマッチングを徹底的に評価し、自分のキャリアにとって最良の選択をするための基盤を築くことができます。企業研究は時間がかかる作業かもしれませんが、その労力は転職成功の鍵を握る重要なステップです。

次のセクションからしばらくは上記ステップ3の情報収集について情報源を紹介していきます。それらの説明が終わったところで最後にステップ4の総合的な検討について説明します。

まず次のセクションでは転職情報サイトの求人情報について説明します。

転職情報サイトの求人情報

転職情報サイトの求人情報は、転職活動において重要なリソースです。これらのサイトは、様々な業界の幅広い企業からの豊富な求人情報を提供し、職種、年収、必要なスキルセット、勤務地、企業文化、福利厚生など、転職希望者が知りたい情報を網羅的にカバーしています。ここでは、転職情報サイトの求人情報を活用する際の具体的なアプローチ方法を詳しく解説します。

業界別の求人情報の探し方

特定の業界での転職を考えている場合、まずその業界に特化した転職情報サイトを利用することが有効です。多くの転職サイトは業界別に求人を分類しており、ユーザーが関心のある業界の情報に直接アクセスできるようになっています。例えば、IT業界、医療業界、教育業界など、特定の分野に特化した求人情報を提供するサイトを活用することで、自分のスキルや経験を活かせる職場を効率的に見つけ出すことが可能です。

企業別の求人情報の探し方

既に目星をつけている企業がある場合は、その企業名で直接検索を行います。多くの転職情報サイトでは、企業名やキーワードを用いた検索機能を提供しており、希望する企業の現在の求人状況を簡単に確認できます。求人情報には、職種の説明、必要な資格やスキル、勤務条件、給与レンジ、採用プロセスの概要など、応募前に知っておきたい詳細情報が記載されています。これらの情報を事前に把握することで、応募書類の準備や面接時の質問内容を具体的に計画することができます。

スキルや職種での求人情報の検索

具体的な転職先が決まっていない場合でも、自分の持っているスキルや希望する職種を基に求人情報を検索することができます。例えば、プログラミングスキルやデザイン能力、マーケティング経験など、特定のスキルセットにマッチする職種の求人を探すことが可能です。この方法では、自分の経験や能力を生かせる職場を効率的に見つけることができ、キャリアアップやスキルアップにつながる転職先の選択肢を広げることができます。

求人情報の比較と検討

転職情報サイトでは、複数の求人情報を同時に比較検討する機能も提供されています。給与、勤務地、仕事内容、企業文化など、自分にとって重要な条件を基に、求人情報を比較し、最も魅力的な転職先を選択することが可能です。また、サイトによっては、企業の評判や口コミ情報も提供されており、実際に働いている人々の声を参考にすることで、よりリアルな職場の雰囲気を感じ取ることができます。

転職情報サイトの求人情報を活用することで、自分のキャリア目標に合った転職先を効果的に探し出し、転職活動を成功に導くための貴重な情報を得ることができます。転職は人生の大きな転機であり、慎重に情報を収集し、じっくりと検討することが重要です。

続いて、次のセクションでは転職情報サイトの口コミについて説明します。

転職情報サイトの口コミ情報

転職情報サイトの口コミ情報は、転職を検討している人にとって非常に貴重な情報源です。これらの口コミは、企業の内部からの生の声を反映しており、給与や福利厚生だけでは把握できない、職場の雰囲気や社風、実際の労働条件など、働く環境の実態について深く理解することができます。以下に、転職情報サイトの口コミ情報を活用する際の詳細なアプローチと、注意点について具体的に説明します。

口コミ情報の活用法

  • 企業文化とのマッチング : 企業の文化や価値観は、働く上で非常に重要な要素です。口コミ情報を通じて、企業が公式に発表している情報と実際の社員の感じている文化や価値観にギャップがないかを確認します。特に、チームワークを重んじる文化があるのか、個々の成果を評価する風土が根付いているのかなど、自分が望む職場環境と合致しているかを見極めるために役立ちます。
  • 実際の労働条件の確認 : 給与や労働時間、残業の有無、休日の取得状況など、実際の労働条件についての情報も口コミから得られます。公式な求人情報だけでは分からない、実際に働いてみないと知ることのできない詳細が明らかになることがあります。
  • キャリア成長と学習機会 : 企業が従業員のキャリア成長やスキルアップをどのようにサポートしているかについての情報も、口コミを通じて得ることができます。特に、研修制度の充実度や資格取得支援の有無、プロジェクトへのアサイン方法など、自己成長のための環境が整っているかを確認できます。

口コミ情報の注意点

  • 主観的な意見のフィルタリング : 口コミは個人の経験に基づく主観的な意見であるため、ポジティブな意見もあればネガティブな意見もあります。一つの口コミだけに頼るのではなく、複数の意見を比較検討し、全体の傾向を把握することが重要です。
  • 時系列を考慮する : 企業の状況は時間とともに変化します。古い口コミ情報が現在も当てはまるとは限らないため、最新の情報を重視し、時系列を考慮して情報を評価することが必要です。
  • ポジティブな口コミの価値を見極める : ネガティブな意見だけでなく、ポジティブな意見に対しても冷静な分析が求められます。特に、具体的なエピソードや事例を挙げている口コミは信頼性が高いと言えます。


転職情報サイトの口コミ情報を適切に活用することで、転職先の企業が自分にとって最適な環境かどうかをより深く理解することができます。ただし、口コミ情報はあくまで参考の一つとして捉え、自分自身で情報を精査し、最終的な転職先の選定に役立てることが重要です。

次のセクションではコーポレートサイトにつてい説明します。

コーポレートサイト

企業のコーポレートサイトは、その企業に関する包括的な情報源であり、転職活動において非常に価値の高いリソースです。コーポレートサイトでは、企業のビジョン、ミッション、価値観、経営理念、事業内容、製品やサービス、社会的責任(CSR)活動、ニュースリリース、採用情報など、多岐にわたる情報が提供されています。以下に、企業のコーポレートサイトを活用する際の具体的なアプローチ方法を詳しく解説します。

企業文化と価値観の理解

コーポレートサイトには、企業が大切にしている価値観やビジョン、社員に期待する行動規範などが明記されていることが多く、これらの情報から企業文化を深く理解することができます。特に、「私たちについて」や「企業理念」などのセクションに注目し、企業がどのような目的で事業を行っているのか、どのような価値を社会に提供しようとしているのかを把握します。

事業内容と事業戦略の把握

事業内容や事業戦略のセクションでは、企業が現在展開しているビジネスの概要、将来的な展望、市場でのポジショニング、競争優位性などが説明されています。これらの情報は、企業が直面している業界の課題やチャンスを理解する上で非常に有益です。また、自分が転職後にどのようなプロジェクトや業務に携わる可能性があるのかを想像するのにも役立ちます。

採用情報の詳細な分析

採用情報のページには、開かれているポジションの詳細、求める人材像、選考プロセス、福利厚生や研修制度など、転職希望者にとって重要な情報が満載です。ここから、企業がどのようなスキルや経験を重視しているのか、社員に対してどのようなキャリアパスを提供しているのかなど、転職後のキャリア形成に関する具体的な情報を得ることができます。

CSR活動と企業の社会的責任

CSR(企業の社会的責任)セクションでは、企業が環境保護、社会貢献、倫理的なビジネス実践など、社会的な課題にどのように取り組んでいるかが紹介されています。これらの情報から、企業が単に利益追求だけでなく、持続可能な社会の実現に向けてどのような貢献をしているのかを理解することができ、企業の倫理観や社会に対する姿勢を把握することが可能です。

企業のコーポレートサイトを綿密に調査することで、その企業が提供する働きがい、キャリア成長の機会、そして自分の価値観やキャリア目標とのマッチングを深く理解することができます。転職活動において、企業選びは非常に重要なプロセスであり、コーポレートサイトはそのための貴重な情報源となります。

続いて次のセクションでは採用サイトにつてい説明していきます。

企業の採用サイト

企業の採用サイトは、その企業がどのような人材を求めているか、どのようなキャリアパスを提供しているか、企業文化はどのようなものかといった、転職希望者が知りたい情報を網羅的に提供する貴重なリソースです。以下に、企業の採用サイトを最大限に活用する方法について、より詳細に具体的に説明します。

人物像とのマッチングの評価

多くの企業は、採用サイト上で求める人物像や必要なスキルセット、資質を明確にしています。これらの記述から、自分の経験やスキル、性格がその企業の求める人材像とどの程度合致しているかを把握することができます。また、企業が重視する価値観やビジョンが自分のキャリア目標や個人的な価値観と一致しているかどうかを評価することも重要です。

従業員インタビューの活用

採用サイトに掲載されている従業員のインタビューやストーリーは、企業の内部文化や実際の働き方、職場の雰囲気をよりリアルに感じ取ることができる貴重な情報源です。これらのインタビューからは、活躍している社員がどのような背景を持ち、どのような価値観を大切にしているのか、また、彼らが直面した課題や成功体験など、具体的なエピソードを通じて企業文化を深く理解することが可能です。自分がこれらの社員と似たような価値観を共有しているか、また、彼らのように企業で活躍できる自信があるかどうかを検討します。

カルチャーマッチの重視

採用サイトを利用する際には、単に職種や給与、勤務地などの条件だけを確認するのではなく、企業文化や働く環境にも着目することが重要です。企業が公開しているミッションステートメント、バリューステートメント、組織のダイバーシティやインクルージョンに関する取り組みなどを通じて、その企業がどのような価値を大切にしているのか、どのような職場環境を提供しているのかを評価します。また、福利厚生やキャリア開発の機会に関する情報も、自分がその企業で長期的に働き、成長できるかどうかを考える上で参考になります。

注意点

採用サイトの情報は、企業が自ら提供しているものであるため、必ずしも客観的な情報とは限りません。したがって、採用サイトで得た情報を基に、さらに深堀りを行うことが重要です。例えば、第三者が運営する業界分析サイトや転職情報サイトの口コミ、ソーシャルメディア上での

従業員や元従業員の発言など、複数の情報源を参照することで、よりバランスの取れた企業評価を行うことができます。

企業の採用サイトは、転職希望者が企業を深く理解し、自分に合った企業を見つけるための重要なツールです。これらのサイトを効果的に活用することで、自分のキャリア目標と企業の求める人材像とのマッチングを正確に評価し、成功する転職活動を実現することができます。

次のセクションでは有価証券報告書と決算説明資料について説明します。

有価証券報告書と決算説明資料

有価証券報告書と決算説明会資料は、企業の財務健全性、経営戦略、および事業運営に関する包括的な情報を提供する重要なドキュメントです。これらの資料を深く分析することで、転職希望者は企業が直面している現在の課題、将来の成長見込み、および潜在的なリスクを理解することができます。以下では、有価証券報告書と決算説明会資料の活用法について、より詳細に具体的に説明します。非上場ケースも最後の方で言及しています。

有価証券報告書の活用法

有価証券報告書は、企業が金融庁に提出する法定書類であり、財務諸表、事業の内容、経営の状況、リスクの情報など、企業の財務と経営に関する詳細な情報を含んでいます。転職希望者は、この報告書を通じて以下のような情報を得ることができます。

  • 財務状況 : 企業の資産、負債、純資産の状況を確認し、企業の財務健全性を評価します。
  • 収益性 : 売上高、営業利益、純利益など、企業の収益性を示す指標を分析し、企業がどの程度の利益を上げているかを把握します。
  • 事業内容と戦略 : 企業がどのようなビジネスを展開しているか、今後の成長戦略や事業計画がどのように設定されているかを理解します。


決算説明会資料の活用法

決算説明会資料は、四半期ごとや年度末に企業が投資家やアナリスト向けに開催する決算説明会で使用されるプレゼンテーション資料です。これらの資料からは、以下のような情報を得ることが可能です。

  • 経営陣の見解 : 経営陣がどのように企業の財務成績を評価しているか、今後の市場環境や事業戦略に対する見通しを知ることができます。
  • 成長戦略 : 新たな市場への進出、新製品の開発、M&Aなど、企業が計画している成長戦略の詳細を把握します。
  • リスク管理 : 企業が直面しているリスクや課題、それに対する対策や管理体制についての情報を得られます。

活用上の注意点

有価証券報告書と決算説明会資料を活用する際には、以下の点に注意することが重要です。

  • 上場企業であること: 基本的に有価証券報告書や決算説明会資料は上場企業が公表しています。非上場企業の財務データを完全な形で確認することは難しいですが、帝国データバンクの与信の情報があればG-Searchのようなデータベースサービスを使ってそれからデータを購入して売上データを見る事ができる可能性があります(売上データが提供されていれば)。
  • 情報の更新: 企業の状況は常に変化しています。最新の報告書や資料を参照することで、現在の企業の状況に基づいた正確な情報を得ることができます。
  • 複数年のデータの比較: 一年間のデータだけではなく、過去数年間の財務データや経営戦略の変遷を比較分析することで、企業の成長パターンや安定性をより深く理解することができます。


有価証券報告書と決算説明会資料を綿密に分析することで、転職希望者は企業の財務的な健全性、事業の持続可能性、成長の可能性を深く理解し、自分がその企業で活躍できるかどうか、そして企業の成長に伴って自分もメリットを享受できるかどうかを判断するための重要な基準を得ることができます。

次のセクションでは技術系情報共有サイトや技術系ブログからの情報収集について説明します。

カジュアル面談

カジュアル面談は、転職活動における非公式な情報交換の場として非常に有用です。このような面談は、フォーマルな面接とは異なり、リラックスした環境で企業の現場のエンジニアやエンジニア責任者と直接対話できる機会を提供します。ここでは、カジュアル面談の設定方法、面談中に求めるべき情報、そして面談を最大限に活用するための戦略について、より詳細に具体的に説明します。

カジュアル面談については下記の記事で紹介しています。本セクションをご覧になられてさらに知りたい場合はご参考ください。


では、話を進めていきます。

カジュアル面談の設定方法

  • 転職エージェントの利用 : 多くの転職エージェントは、希望する企業でのカジュアル面談の機会を提供しています。エージェントを通じて面談を設定することで、企業側に自分の興味や意欲を事前に伝えることができます。
  • 転職情報サイトの活用 : 特定の転職情報サイトでは、カジュアル面談のオプションを提供している場合があります。サイト内の機能を利用して直接企業にアプローチすることが可能です。
  • 直接連絡 : LinkedInや企業の公式サイトに掲載されている連絡先を通じて、直接人事部門や関連部署にメールでカジュアル面談のリクエストを送ることも一つの方法です。この際、自己紹介と面談を希望する理由を明確に述べることが重要です。

カジュアル面談で求めるべき情報

  • 職場の文化と雰囲気 : 非公式な会話を通じて、企業の職場文化やチームの雰囲気について具体的な話を聞くことができます。実際に働いている人からの直接的な意見は、企業の公式な発表やウェブサイト上の情報とは異なる視点を提供してくれます。
  • プロジェクトと技術的な課題 : 現場のエンジニアやプロジェクト責任者から、取り組んでいるプロジェクトや直面している技術的な課題についての詳細を聞くことができます。これは、自分が貢献できる分野や興味を持てるプロジェクトがあるかどうかを判断するのに役立ちます。
  • キャリアパスと成長機会 : 企業が従業員のキャリア成長やスキル向上にどのように取り組んでいるかについて話を聞くことができます。また、将来的にどのようなキャリアパスが想定されているかについても探ることが可能です。

カジュアル面談を最大限に活用するための戦略

  • 事前準備 : 面談に臨む前に、企業やその業界についてのリサーチを行い、質問事項を用意しておくことが重要です。これにより、有意義な情報交換が行えます。
  • 積極的な質問 : 自分の関心事や不安に思っている点について積極的に質問しましょう。カジュアル面談は、双方向のコミュニケーションが可能な場です。
  • フォローアップ : 面談後は、参加してくれた人々に感謝のメールを送り、さらなる質問や疑問があればその時点で尋ねることも大切です。これにより、関係を継続的に築いていくことができます。

カジュアル面談は、転職活動において企業を深く理解し、自分がその企業で働くことを想像するのに役立つ貴重な機会です。積極的に活用することで、より適切な転職先を見つけるための重要な情報を得ることができます。

ここまでのセクションでは個別の情報源について説明してきました。次のセクションではそれらを総合的に検討して企業研究する例を見ていきます。

総合的な検討

本セクションではこれまでに紹介してきた各種情報源を活用して企業研究を進める具体例を紹介したいと思います。

企業研究の進め方の大枠は次の通りです:

  1. カルチャーマッチを調べる。
  2. 事業の成長性を調べる。
  3. 企業の内部的な情報を入手してこれまでの調査と合わせて理解を深める。

では進めていきたいと思います。

本セクションはキャリアの棚卸しと自己分析が済んでいる前提で進めます。まだの方は これまでのキャリアの棚卸し 自己分析 をご覧ください。各情報とキャリアの棚卸しと自己分析の結果を照らし合わせながら見ていきます。

まず初めに次はカルチャーマッチの調べ方を説明していきます。

カルチャーマッチを調べる

このプロセスで使う情報は以下の4つです。

まず企業の採用サイトを確認します。公式情報なのでよく読みます。特に見るべきポイントは下記の項目です(記載がない場合はスキップします)。

  • ミッション、バリュー
    • 全社的な価値観・行動規範と自分のそれがマッチするか考えます。
  • 事業内容
    • 関わりたいと思っている事業内容が自分の想定や期待から乖離していないか考えます。
  • カルチャー
    • 自分が所属するかもしれない組織のカルチャーに自分の価値観がマッチしそうか考えます。
  • 求める人物像
    • 求める人物像として期待されている働き方をすでにこれまでに実行してきたか振り返ります。
  • 社員インタビュー
    • 求める人物像の具体例として捉えます
    • インタビュー内容と比較して、この人が同僚だとして一緒に働けることを想像できるか考えます。
  • 募集内容
    • 情報が多いので注意してよく読みましょう。
    • 特に注意するのは例えば下記のような項目です:
      • 仕事内容
        • 記述内容が具体的か曖昧か。
        • 具体的な記述がある場合は組織化が進んでいる傾向を示唆し、曖昧な記述の場合はできるだけカバー領域を広げて働いて欲しいような組織状態を示唆してい可能性があります。
        • 自分が活躍しやすい組織フェーズか参考にします。
        • もちろん仕事内容自体が自分の希望に沿うかもきっちりチェックします。
      • 開発環境
        • 経験を活かせる環境か
        • 新しい学びが得られる環境か
        • レガシーすぎないか
      • プロジェクトの進め方・働き方
        • スクラム/アジャイルのような適応型スタイルかウォーターフォール形か
        • 自分の気質・志向性に合う仕事の進め方になっているかという視点で確認する。
      • 必須スキル・経験
        • その名の通りなので、できるだけ全てを満たす必要があります
      • 歓迎スキル・経験
        • こちらもほぼ必須くらいに考えた方が無難でしょう。
        • 採用側は他の候補者との差別化をここで見たりします。

ここで強調してお伝えしておきたいことは、新卒採用ページも見ることです。なぜなら新卒向けに会社のことを噛み砕いて易しく丁寧に記述されている場合が多いからです。

注意点:

  • 全ての項目が掲載されているわけでないかもしれません。
  • ミッション、バリュー、カルチャー事業内容はコーポレーションサイトの方にまわされているか、そちらの方が詳しく記載されているかもしれません。その場合はコーポレートサイトも確認します

次に該当企業の転職情報サイトの求人情報を確認します(なければスキップします)。ここでの確認項目は以下の通りです:

  • 募集職種の年収帯
    • 自分の希望と乖離がないか確認します。
    • 年収は下限と上限が記載されている場合が多いですが、上限については慎重に捉える方が良いでしょう。なぜなら管理職や役員クラスではないともらえない金額を記載されているケースもあるかもしれないからです。従ってこの点は面接、転職エージェント、カジュアル面談での確認が必要になります。
  • 採用サイトに記載されている項目
    • 別の記述の仕方で詳しく説明されている可能性もあるので読み比べて比較する

最後に、口コミを確認していきます(口コミが見当たらなければスキップします)。企業側が採用情報として発信している上記などの項目の裏付け確認を念頭に、口コミの評価がどうなっているか見ます。

例えば:

  • 年収・給与
    • 自分と同じ職種で同等の経験年数の人の口コミから、どのくらいの年収になりそうか推測できます。
    • 同じ職種のデータがない場合でも、同等の経験年数で異なる職種間の年収帯が大体共通していれば、その企業の年収相場が想像できます。
  • 企業・組織文化
    • 実際に採用サイトの文言が反映されているか
  • 退職理由
    • 期待からの乖離が何だったのか
    • 経営・事業方針の変化は
    • 評価の実態は

クチコミ見る際の注意点は、退職者のクチコミはネガティブな感情を反映している可能性もあるということです。会社がネガティブな印象なのかは本人と会社との相対的な関係性に依存するため、必ずしも他の人にとってネガティブとは限らないかもしれないということを頭の片隅に入れておくことが大切でしょう。多数のクチコミが類似の判断をしているときは信憑性があると考えて良いでしょう。

ここまでの定性的な分析で該当企業のカルチャーが自分に合うか検討できるはずです。より詳細でリアルな情報を得るには後ほど説明するカジュアル面談などを活用します。

次は事業の成長性を調べる方法を説明します。

事業の成長性を調べる

仮にカルチャーマッチが良くても事業の成長性が思わしくなければ、転職後に経営・事業方針が急激に変化し、関心の持てない事業にアサインされたり、自分の強みが活かせない環境になってしまい働きにくくなる可能性もあります。もっと悪い場合には業績が悪化して昇給が一時停止になったり、年収が上がりにくくなったりするかもしれません。

その様なリスクをできるだけ避けるためには、企業の定量的なデータや事業リスクについて押さえておくことが大切です。そのためにこのセクションでは有価証券報告書と通期の決算説明資料を使って企業の成長性をの概要を把握する方法を説明します。


ここで該当する情報は下記です:

非上場企業について: 有価証券報告書や決算説明資料は基本的に非上場企業は公開されていない場合がほとんです。この場合、G-Searchの様なデータベースサービスから帝国データバンクの調査データに該当企業のデータが存在し、その中に売上データや企業の評価点があればそこから財務状況を推測できます。

分析方針は通期決算説明資料を軸により詳細または不足情報の補完として有価証券報告書を用います。

これは通期決算説明資料が有価証券報告書の情報をグラフなどを用いて程よく要約しており、有価証券報告書は情報量が膨大で細部まで読もうとすると時間がかかりすぎるためです。

まず直近の通期決算説明資料を見ます。少なくとも次の項目は目を通します:

  • 売上・売上総利益、ドメイン別の売上・売上総利益
    • グラフが全体的に右上がり傾向で成長しているか。
    • 急激に減少しているなら何か事業で問題が起こっている可能性があるので、その付近の決算説明資料や有価証券報告書(事業の状況の章)を調べて原因を探ります。
    • 特にドメイン別は注視します。自分が関わりたいと思う事業関連のセグメントのグラフのシェアが一定値から増えていないまたは減衰してないか確認します。これらの状態であれば該当セグメントの事業は成長していないことを示唆してる可能性が高いです。
  • 販管費
    • 急激な変化点があるか見ます。あればその前後で何が起きているのか、過去数年の決算説明資料や、有価証券報告書 事業の状況の章を調べます。

次に足元のキャッシュがしっかりしているかも調べるため、有価証券報告書の 第1企業の概況 主要な経営指標等の推移 の営業・投資・財務キャッシュフロー(CF)を確認します。

  • 営業CF
    • 営業キャッシュフローは、企業の日常的な業務活動から生じる現金の流れを示します。企業の主要な収益活動からどれだけの現金が生まれているかを測る指標として重要です。
  • 投資CF
    • 投資キャッシュフローは、企業の投資活動に関連する現金の流れを示します。企業が将来の成長のためにどのように資源を再配分しているかを示すため、負の値を示すことが多いです。
  • 財務CF
    • 財務キャッシュフローは、企業の資金調達活動から生じる現金の流れを示します。企業がどのようにして市場から資金を調達し、その資金を株主にどのように還元しているかを示します。

非常に大雑把な見方では、営業CFが+であれば許容範囲です。営業CFが-の場合は、その状態が連続して続いている状態であれば事業からキャッシュが生み出せてないので注意が必要でしょう。投資・財務CFは状況により±両方あり得ます。必ずしも-だからといって悪い状態ではありません。

キャッシュフローが健全で売上も右肩上がり、関心のある事業ドメインの売上も増加しているなら、概ね企業と事業が成長していると考えられます。

ここまでは定量的な側面から企業の成長性を見てきました。次は定性的側面を見ていきます。有価証券報告書の 第2事業の状況 に着目します。特に次の項目を見て事業の課題やリスクを調べます。

  • 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
    • 特に対処すべき課題に注目します。
    • 例えば、M&Aや内部管理について強調している場合は、自社開発からM&Aによる事業拡大に比重がシフトしている可能性を推測できたり、内部管理体制を強化しているため組織ルールが厳格化している状況かもしれないと推察できます。
    • この様なシグナルを見逃さずに自分が参加する事業タイミングなのかしっかり考察することが大事です。
  • 事業等のリスク
    • 法規制や業界トレンドの変化についての記載があれば注意します。
    • 実は業界の大きな流れとして、自分が期待していたことがやりにくくなっている可能性が示唆されているかもしれません。
  • 経営上の重要な契約等
    • 大きな合併などの知らせがあれば注意します。
    • 今後の事業が大きく変わるシグナルかもしれないです。

これらを知ることで入社後に何か状況変化が起きそうかをあらかじめ推測することができます。面接やカジュアル面談の時に定性面で気になることについて的確な質問をするためにもしっかり見ておくことが大切です。

以上、定量面・定性面の両方から企業の成長性を考察する流れを説明してきました。

次は、これ以外の企業の内部的な情報について考察することを見ていきたいと思います。

カジュアル面談で内部的な情報を入手して足りない情報を補完する

ここまでに紹介したカルチャーマッチと事業の成長性に関する企業研究の方法で企業の十分全体像を把握できます。

しかし定性的な情報、特にCTOや上長の開発組織運営方針・評価方針、昇給の実態、開発組織メンバーの志向性など組織的内部情報は口コミ情報に書いてなかったり、書いていてもあくまで個別の従業員視点で書かれていて組織の立場から俯瞰的な視点で述べられていないことがあります。

口コミの情報はおさえつつも、意見のバランスを取るために、できればカジュアル面談を通じて応募する前にマネジメント層や現場のエンジニアからのリアルな情報を集めたいところです。

事前に口コミを入手して気になるところがあればそれを直接聞くのが良いでしょう。入社後も組織に馴染み継続的に評価され昇給していくか知るためには、例えば次の様な質問が考えられます。

  • どのような振る舞いが一番高く評価されるか。
  • 逆に低い評価を受ける振る舞いは何か。
  • メンバーとして求められる資質として技術志向が強いのかサービス志向が強いのか。
  • 開発スタイルについて。例えば、アジャイル組織で非同期進行+プルリクエスト+レビュー+slack通知で開発進むスタイルなのか等。
  • 平均的な開発タスクの規模と開発期間について。
  • セールスやプロダクトマネージャー(PdM)との関わり合い方。
  • 平均的なミーティングの頻度と時間は。
  • 昇給するとき変化幅が平均どれくらいか。
  • 最大の昇給幅付近で昇給できたエンジニアの実例。どのくらいの成果の時どのくらいの昇給幅かの目安になる。
  • 過去数年のボーナス(賞与)の支給実績は。

注意点: 上記の評価や昇給につながる質問をする前に、前提として会社や仕事に興味があって面談時間をいただいているという姿勢で臨み、仕事自体や技術的な話を中心に面談を展開していくべきです。相手に敬意を示すことを忘れない様にしましょう。

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